堀部安兵衛との出逢い

 幼い頃の遊びと風景ー。あの頃、都営団地内の公園ではいつでも子供らの遊ぶ声がした。自転車を乗り回したり、刑どろ(刑事と泥棒にチーム分けして行う鬼ごっこのような遊び)をしたり、たまに来る紙芝居を見ながら駄菓子を食べたり、ゴム跳びをする女の子がいたり。とにかく至る所に子供がいて押し合いへし合い場所を取り合ってはそれぞれの遊びに興じていた。近くには忠臣蔵で有名な赤穂義士四十七士が眠る泉岳寺もあり、その境内でさえ僕らの格好の遊び場だった。面白いものを見つけようと毎日町中を駆け回っていた。しかし、現在と違い日常に埋没するかのようにひっそりと佇む忠臣蔵の史跡に少年たちの注意が注がれることはなかった…自転車を寄り掛けた場所が四十七士のリーダー大石内蔵助(オオイシ クラノスケ)像であっても。刑どろで身を隠した場所が四十七士切腹の細川邸跡であったとしても。

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